新しい技術というものは、文字どおりいつの間にか私たちの手元に届いている。
おそらく自動運転車もまた、いつの間にかふつうに公道を走っている日が訪れるだろう。
イギリスの新聞「ザ・ガーディアン」による以下の記事では、多くの人たちが現在(2017年1月)ではあまりハッキリとは知らない自動運転車に関する疑問について、比較的わかりやすく解説されている。
あくまでイギリスの新聞による記事であるということ、そして現時点での予測に基づいた内容であることを前提で読んでゆきたい。
「運転手」それとも「乗客」?
これは自分で決めることができます。
自分で運転したいと思えばハンドルを握って運転できますし、あくまで乗客として車内でクライアントとミーティングをしてもいいのです。
また車の種類にもよるでしょう。 一部の専門家によれば、2030年までには個人所有の自動運転車が普及し、「乗客がコントロールできる車」として使用することができるといわれています。
またタクシーは完全に無人化された「ロボット・タクシー」となり、お客さんだけで目的地まで到達できるようになると予想されています。
自家用車を持つ意味ってある?
自分で運転する必要もなく、他人に頼む必要もない。
そんな世界で、果たしてあえて自家用車を持つ意味はあるでしょうか?
2030年までには今のUberのようなサービスが自動運転車で可能になるといわれています。
つまり、アプリのボタンをタッチするだけで自分のいるところに無人の自動車がやってきてくれるのです。
しかも様々なタイプの車を呼び寄せることが可能になると考えられます。
ただし、都心に住む若い世代は自家用車を持っていてもあまり意味がなくなるかもしれませんが、郊外に家族で住んでいる人たちはやはり自宅に車をおくようになるだろう、と専門家は指摘しています。
追突事故の可能性は?
2008年に行われた調査によると、追突事故の93%は人的ミスによるものだという報告が出されています。
つまり人的ミスを防ぐことができれば、追突事故の可能性はほとんどなくなると考えていいでしょう。
酒気帯び運転、運転中の電話、ケアレスミス、運転そのもののミスなど、人が原因となっている事故は多く起こっています。
もちろん自転車や歩行者など、運転手以外にも交通事故の原因は道路にありますので、あらゆる場面を想定した安全テストが今後も続けられる必要があります。
しかし、車の運転手によって引き起こされる事故というのは過去のものになると予想されています。
電気自動車が主流になる?
2030年までにすべての自動運転車が電動になっているとは考えられません。
現在多くのIT企業が電動自動車に注目しており、またドイツ、日本、アメリカの自動車会社も電気自動車・ハイブリット車に力を注いでいます。
またより効率のいいリチウムイオン・バッテリーの開発も進められています。
しかし同時に、巨大な石油産業が存在していることも事実です。
少なくとも向こう40年間は、アメリカの石油会社は力を持ち続けるという見方もあります。
運転免許は必要?
必要ですが、おそらく違ったパターンが出てくるでしょう。
現在マニュアルの試験とオートマの試験があるように、自動運転車の試験が登場すると思われます。
オートマ限定ならぬ「自動運転車限定」の免許では、指定を受けた種類の車だけ運転できるようになるでしょう。
試験では自動運転車の動く仕組みも問われることになるはずです。
交通渋滞は緩和される?
様々な種類の乗り物がオンデマンドで路上を走っている状態が想定されます。
そのため、路上に存在する車や人の数はより多くなるでしょう。
しかし同時に、自動運転車であれば車同士がお互いに接近して走っても安全に走行できます。
また無駄にブレーキを踏んだりアクセルをふかしたりするようなこともありません。
そのため車の流れは今よりもスムーズになるでしょう。
結果としては、交通渋滞は緩和されると予想されます。
自動運転車はハッキングに弱い?
自動運転車はコントロールユニットが多くコンピュータ制御されおり、ワイヤレスで外の世界とつながっています。
そのためハッキングの対象になる可能性は高いと考えられます。
ハッカーが遠隔で車を操作し、発車させないようにしたり、衝突させようとしたり、またドライバーの個人情報を盗んだりする可能性があるのです。
そのため重要な部分に対するセキュリティ対策はこれからもどんどん強化され続けることになります。
自動運転車を所有している人は保険に加入する必要ある?
あります。
従来の自動車保険とは別の種類の保険が必要となるでしょう。
自動車メーカーから自動運転車の購入者に適した保険がすすめられるようになると思います。
運転手のミスによる交通事故よりも、自動運転車という製品そのものが原因となる事故のほうが多くなると予想されます。
そのため消費者保護の観点に立ち、製造者が保険を提供するようになるはずです。
歩行者や自転車を巻き込むリスクは低くなる?
現時点では、歩行者・自転車と自動運転車とがどういう状況に出くわすのか、あまり想定できません。
歩行者が走っている車を見てそれが自動運転車かどうかを判断できるのか?
もし判断できたとしても、それに対してどういう行動をとればいいのか?
まだわからないことばかりです。
全体的に事故は90%減少し、交通渋滞も40%緩和され、排出ガスも80%減少し、駐車スペースも半分で済む、という良い効果が予想されています。
それでもやはりIT機器ですので、導入当初は想定外の事態が起こったり、場合によっては人心の安全に影響があるような事態が起こらないとは言い切れないのです。
そのほかにどんな種類の自動運転機械が予想されていますか?
「飛ぶ自動車」「歩道ロボット」「配達ドローン」などを2030年までに車道や歩道で目にすることになるでしょう。
また無人運転トラックもすでに世界各国で試験運用されており、ダイムラーは2016年にすでに公道で試験運転を実施しました。
ボッシュはトラックをスマートデバイス化することを目指しており、トラックがクラウドから情報を入手し、道の混雑具合や近道・回り道の有無をチェックしたり、目的地での荷下ろしに必要な機材を特定したりすることも期待されています。
自動車会社、それともIT企業?
自動運転車開発には多くの企業が乗り込んできています。
Uberのほかアップル、グーグル、テスラ、インテルなどのIT企業に加え、アウディ、BMW、ホンダ、フォルクスワーゲンなどの自動車メーカーなど、少なくとも33社が競い合っているといわれています。
2兆ドル規模に及ぶ世界の自動車産業は、今デジタル化への過渡期をまさに通過している最中です。
エンジンや車体の改良ばかりに集中してきた自動車産業はデジタル化・オートメーション化の波に乗ってゆけず、最終的に取り残されてしまうのではないか、と予測している人もいます。
しかし今までもあらゆる産業がITの影響を受けており、そこから生き残ってきた企業があるのです。
自動車産業はまさに今その影響をもろに受け、生き残りをかけて戦っているところです。
IT企業と自動車メーカーが争い合っていると一般的には受け取られがちですが、協力体制を模索する動きもたくさん見られます。
むしろ生き残るためにはお互いの得意分野を生かしたスタイルが必要でしょう。