ロンドン地下鉄のドライバーレス化 70億ポンドのコストで「財政的にプラスにならない」

f:id:ronnieeda:20201027190426j:plain

 

ロンドン交通局(TfL)のシニアマネージャー向けに作成されたみられる文書によると、ロンドン地下鉄のドライバーレス化には70億ポンドのコストがかかり、その上ですべての地下鉄にスタッフを乗せる必要がある、と記されていることが分かった。

 

このプレゼン資料は社外秘の資料が流出したもので、地下鉄をドライバーレス化しても「高い資本コストを考えると財政的にプラスにはならない」と述べられている。

 

流出した文書を入手した地下鉄運転手組合「Aslef」は、ドライバーレス化というアイデアが「政治主導のファンタジー」だったことが証明されたと述べた。

 

ジョンソン首相は以前からドライバーレス化を主張

7月にボリス・ジョンソン首相は、将来ロンドン交通局を救済する条件として、運転手のいない地下鉄の導入を推し進めていた。

 

またジョンソン氏は、2014年にロンドンの市長を務めていた時にも、ロンドンの地下鉄に運転手なし列車を導入する計画を最初に承認し、夏にはその展開に向けての活動を開始していた。

 

「運転席にずっと座っている人がいなくても、列車を走らせることができます」

 

「私がロンドン交通当局に言いたいのは、この技術的な飛躍を利用しよう、これ以上組合の捕虜になるのはやめよう、地下鉄をドライバーレス化しよう、そしてそれを今秋のロンドン交通局の資金調達の条件にしよう、ということです」。

 

「今後も検討を続けるが積極的に追求しているわけではない」 

今回リークされた同文書では、ネットワークをドライバーレス化することは「費用対効果が低い」としている。

 

その文書によると、運転手をなくすことによるスタッフの節約は「そのために必要とされる追加の安全システム、監視、セキュリティフェンシングなどのメンテナンスコストの増加によって相殺される」とし、すべての地下鉄の列車にはまだ列車の運転手が必要であるとしている。

 

「高額な資本コストを考えると、ドライバーレス化は全体的に財政的にプラスにはならない」

 

「地下鉄ネットワーク全体での導入は、ロンドン交通局の現在の財政的、長期的な資金調達の状況をさらに悪化させる別の課題を提示することになる」と文書は締めくくっている。

 

 

 

これについてロンドン交通局の広報担当者は次のように述べている。

 

「私たち鉄道事業者は、輸送ネットワーク上で基本的な安全上重要な役割を果たしており、すべての現場スタッフとともに、パンデミックの間、ロンドンの移動を維持するために不可欠な役割を果たしてきました」

 

「私たちは、5月に合意された緊急資金調達協定を受けて、政府が委託したロンドン交通局の財政に関するKPMGのレビューのために、この分析をまとめました」

 

「運転手のいない列車の可能性、コスト、メリットは、ロンドン交通局が過去にも検討してきたことであり、今後も検討を続けていきますが、積極的に追求しているわけではありません」。

 

ロンドン市長はドライバーレス化に反対

しかし、現ロンドン市長のサディク・カーン氏は、運転手のいない列車を持つというアイデアを「狂気」と表現している。

 

2018年には「ロンドン市民やスタッフ、訪問者を危険にさらすために数ポンドを節約することは、無謀の極みだ」と述べていた。

 

「そうすることが安全ではない限り、私は実行しません。安全な場所ではもちろん、できる限りの効率化を検討します」。

 

ロンドン交通局は運転手なしの地下鉄の運行を計画しているが、2030年までは運行されないと見られている。

 

ロンドン地下鉄の一部の列車は現在、半自動運転モード(発車と停止は自動化されているが、必要に応じて運転手がドアを操作して列車を運転する)で運行されている。

 

ロンドンの一部を走るドックランズ・ライト・レイルウェイ(Docklands Light Railway)では、1987年の開業以来、運転手なしの列車が運行されているが、必要に応じてドアを操作したり、列車を運転したりするための係員が常駐している。 

 

 

 

www.independent.co.uk